
4-1 思考のカタチ
さあ、4講目です。 そろそろ、マンダラートのことが分かってきた頃かと思いますが 、ここで一度、オサライしておきましょう。 マンダラートとは「マンダラを使いこなす技術」というほどの意味なのですが、まずは、その【マンダラ】って何なのだ? ということを確認しておこうと思います。 まず、多くの人が「マンダラって曼荼羅のことでしょ」と思っているだろうなぁ。 でもそれは、まったくの誤解、全然、違うのです! で、今日は、そこから話を始めよう。 マンダラートを開発した頃、私は、デザイナーとして、後進の育成のためにデザイン学校の教壇に立っていました。 私は、自分のデザイン事務所を立ち上げたばかりで、スタッフの育成も大きな課題だったので、これは「一石二鳥」だと教壇に立つことを引き受けたのです。 まさに暗中模索だったけれど、その《模索》が功を奏して、目が開けてきた。 その模索は「脳はどのようにして思考を獲得してきたのか?」という問いを持ったことでした。 あなたに、生まれたばかりの頃の記憶はないだろうけれど、生まれてきてしまったこの世という《空間》を、必死になって理解しようとしていたであろうことは、幼児を観察すれば、分かる。 幼児の脳は、自分を中心にして、周囲の空間を観察し、理解しようと意識を集中しているのです、ね。 人間は、自分を中心にして、その四方八方に意識を配って生きている、それが思考のカタチの原型なのですね。 その時、脳が会得した空間をデザインしたものが、今、マンダラと呼んでいる、カタチなのです。 そのカタチが、これです。

さて、あなたは、自分を取り囲むこの八方の空間の、どれかを選択して、その方向へ一歩踏み出すことができる。 すると今度は、そこを中心として、新しい8つの空間が生まれてくる。 どちらの方向に動いても、常に同じカタチの中心にいる、ということになることに気づいていますか? これが、人間存在の、動きと環境の関係式です。 私の、思考のデザインは、こうして始まった。 当初、私はこのカタチを、HIROGRAM と呼んでいた。 Hiro Art Directions で使い始めたカタチという意味です。 一度カタチを与えられたモノは、どんどん進化していきます。 一番力強いサポートは、人間の脳の短期記憶は「ほぼ8つである」という理論だった。 そうか、人間の脳は一度に8つまでしか処理できないんだ、という情報は、私を大いに力づけてくれたのです。 ここから後のことは第一講の「1-2 マンダラートとは何か?」に書きました。 問題は、このカタチは「曼荼羅から借りてきたものではない」ということです。 ある日、打ち合わせ中のクライアントから「これは曼荼羅ですか?」と訊かれました。 当時、私は、曼荼羅というものを知りませんでした。 そこから、私の曼荼羅研究が、始まります。 数年間にわたる勉強の結果は、虚しく、終わりました。 曼荼羅には、私の求めるものが、なかったからです。 その経緯は【曼荼羅 智慧の構造 その秘められた謎を解く】という著書に、詳しく書きました。 ただ、この時に知った《マンダラ》という言葉の意味に惹かれて、この図形を《マンダラート》と名づけたのです。 マンダ = 物事の本質、真髄、願望 ラ = 完成、成就、達成 古代サンスクリット語の、この意味は、私の心を強く惹きつけました。これこそが《考える》という行為の目的だ、と思ったのでした。 思考とは「モノゴトの本質や真髄を掴むため」の行為であって、私は、そのための思考のカタチをデザインしようとしていたのでした。